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かご
加護
宮本 百合子
「大阪毎日新聞(夕刊)」1920(大正9)年8月17日~28日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,147 字 · 33 页
その日の暮しにこそ困らなくても、片時も心の安まる暇のないうちに、こうやって突然子供を抱えて、後に遺されるような目に会わなければならない。――
今だに両親さえ健全で、普通世間で幸福と呼ばれるあらゆる幸福を一身に集めているお幾には、これ等の苦痛は、想像以上の苛責とほか思われなかった。彼女には考えても見られない。その恐ろしい苦しみを後から後からと、よく、どこまでも背負って行くと思って見ると、慎ましい小柄なお恵さんの姿は、さながら悲運の使者のようにさえ見える。ほんとに若しこのまま続いたら、仕舞にはどんなことになるだろう。
お幾の頭には、ふとしたことからつい半年ほど信仰し始めた、天理教の教が何時となく浮み上っていた。あの教では、人が思いがけない不幸や災害に遭うのはきっとその人が、何時か神の御心に添わないことをしているからなのだというのを、種々様々な実例を引いて話されその言葉を信じている彼女は、やはりこの場合にも同様の理論を当箝(あては)めて考えて見ずにはいられなかった。つまり、お恵さんの身に現れて降懸って来たこの度の不幸は、どこかに神の御旨を奉じなかったという因が在って起った果ではあるまいかということになるのである。