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すけごろうよざい

助五郎余罪

牧 逸馬

「探偵趣味」1926(大正15)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,407 字 · 15 页

青空文庫

助五郎は思わず独り言を洩らした。「昔なら十両からは笠の台が飛ぶんだ。へん、あんまり業突張りが過ぎらあな」

五

和泉屋の晴れの披露目とあって、槙町亀屋の大浚えには例もの通り望月が心配して下方連を集めて来たまでは好かったが、笛を勤めるのが乗物町の名人又七と聞いて、思い掛けない光栄に悦んだのが事情知らずのその日の新名取り和泉屋の若旦那。又かと眉を顰めた者も多かったなかに、度々同じ段に座って又七の意地の悪い高調に悩まされた覚えのある雷門の杵屋竹二郎は、自分の弟子の地ではあり、これは困ったことになったとは思ったものの、取替えて貰うわけには行かず第一あれ丈の吹手には代りもなし、仕方のないところから和泉屋を説き伏せて白羽二重一匹に金子を若干、その日の朝のうちに乗物町へ届けさせたのだった。笛に調子を破られては手も足も出ないので、又七の普段を識っている相下方の連中は、吾も吾もと付届けを運ぶことを忘れなかった。するだけのことを済ませば宜かろうと、竹二郎はおっかな喫驚のうちにも幾分の安心をもって舞台へ上ったのだったが、和泉屋からの贈りはそれで好いとしても、彼自身の名前で何も行っていないことに、竹二郎は気が付かなかったのである。