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べんきょうき

勉強記

坂口 安吾

「文体 第二巻第五号(五月増大号)」1939(昭和14)年5月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,952 字 · 36 页

青空文庫

生の馬肉やオットセイの肉などを食い、遂に赤蛙の生きた奴を食うところまで心をきめたが、どうしても食いたくないという意志などがあって、相反目せる精神がひとつの人体内に於てまき起す争いの結果は乱暴だ。食べられたくない赤蛙よりも、これを食べようという先生の方が、より以上に慌しく惨澹たる悪戦苦闘をするのであった。

孤独の先生は思うに弟子が欲しかったのだ。けれどもペルシャ語だの安南語などいうものは、先生の方が月謝を払っても習ってくれる者がない。だから遂に見出したたった一人の弟子、栗栖按吉をいたわってくれることといったら涅槃大学校の梵語の先生も及ばないという風がある。

「その程度なら、君、語学を専攻するだけの天稟がある」と、先生は梵語の手並をためした上で、こんな思いきったお世辞を言う。涅槃大学校の梵語の先生と違って、決して笑わないから、言葉がみんなほんとのような気がするのだった。「ラテン大学の言語学科は全世界の天才が集ってくるが、中には丁度君程の才能しかない男がいたです。一年そこそこでその程度なら、日本では梵語学者になれるな」

先生の言葉はなんとなくあらゆる物に心安い感じを起させる。