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べんきょうき

勉強記

坂口 安吾

「文体 第二巻第五号(五月増大号)」1939(昭和14)年5月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,952 字 · 36 页

青空文庫

尤も按吉が六人目のチベット学者になりかねないのは正真正銘のところらしく、即ち帝国大学の先生が文法もよくお知りにならず、辞書もおひけにならないことでも大概察しがつくのであった。

丁度そのころチベット語の大家山口恵海先生の所説で、古来から高麗人と称びならわしていた帰化人たちがチベット人ではないかという発表があった。現に高麗の言葉というウズマサだのサイタマだのという地名がチベット語であるし、カグラ、サイバラがチベット語で、あの文章のヤというかけ声のようなものが卑猥な意味をもったチベット語だというのである。サンバソウがチベット語で「トウトウタラリ」の全文がそっくりチベット語にほかならず、現にチベットに於ては、これとほぼ同じような踊りが行われていると言うのであった。

この程度にわが国の古い文化に密接な関係があってみると、鞍馬先生のうますぎるおだてに乗るのは危険だと思いながらも、つい六人目の学者になるのも満更ではなさそうだという大きな気持になるのであった。

さあ按吉がチベット語の伝授を受ける快諾をすると、先生の勇み立つこと、それ教科書だ、辞書だ、文法書だ、参考書だ、チベットの事情に関する紹介書だ、これもやる、あれもやると按吉の膝の上へ積み重ねてくれる。