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べんきょうき
勉強記
「文体 第二巻第五号(五月増大号)」1939(昭和14)年5月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,952 字 · 36 页
その結果、次のような理由によって、先生はまったく厭世的になったのである。即ち先生は按吉に言った。
「なんだ君。交接というものは実にあっけないものじゃないか。快感なんか、どこにあるのだ。君、そうじゃないか。馬鹿にしてやがる。僕は君、あの時だけは、世界中の言葉という言葉が総がかりになっても表現しきれない神秘な感覚があるのだと思いこんでいたんだぜ。僕は君、一生だまされていたようなものだ。僕はもう、つくづく都会の生活がいやになったな。くにへ帰って、暫くひとりで考えてくる」
先生自体が神秘すぎて、按吉には、先生の厭世の筋道や内容がどうもはっきり呑みこめなかった。世界中の言葉という言葉が総がかりになっても表現しきれない神秘な感覚というものをどうして三十何年も我慢していらっしゃったのか分らないし、その予想が外れたからといってどうして故郷へ帰らなければならないのかてんでわけが分らない。一生だまされていたなどと大変なことを言って嘆いていらっしゃるが、誰がどういう風に騙していたのだか一向わけが分らない。先生がこんな大変なことを言って嘆いているのをきいていると、先生が言葉という言葉をみんな覚えようとしたのは、つまりそれを総がかりにしても表現しきれないようなことを、実はどこかに表現されているのだと感違いしてせっせと勉強していた