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べんきょうき
勉強記
「文体 第二巻第五号(五月増大号)」1939(昭和14)年5月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,952 字 · 36 页
水彩やパステルなどでトランク一杯絵を書いていたが、呆れたことには、女の姿の絵ばかりである。按吉は龍海さんを見くびっていたわけではないが、坊主の絵だから南画のような山水ばかり想像して、とにかく風景が多いだろうと思っていた。そこで、按吉は驚いた。むしろ唸った。絵が名作のわけではない。何百枚の絵を見終って、女以外の風景画が、花一輪すら、なかったからに外ならなかった。
「僕は、女のことしか、考えることができませんので……」
びっくりした按吉をみて、龍海さんは突然まっかな顔をして、うつむいて言った。龍海さんは素性の正しい坊主だから、どんな打ちとけた仲になっても、あなた、とか、あります、という丁寧な言葉を使った。
龍海さんは痩せ衰えて、風に吹かれて飛びそうな姿であったが、凡そ執拗頑固な決意を胸にかくしていたのであった。それは、油絵の道具をきっと買ってみせるという、小さい乍らも凡そ金鉄の決意であった。そこで食事を一食八銭にきりつめ、そのためには非常に遠い食堂へ行き、通学に四哩歩き、そうして貯金を始めたのである。愈々予定の額になって、さて、油絵の道具を買いに行こうという瞬間に、盲腸炎になってしまった。