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うごかされないということ

動かされないと云う事

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,053 字 · 3 页

青空文庫

武者小路さんの「後に来る者に」の中に動かされない強みと云う事の書いてあったのを覚えて居ます。

動かされないと云う事を今の私は或る意味で非常にのぞんで居る事です。

私の狭い智や愛、まだ年の工合で、時々は自分の恐れを感じるほど物事に動かされます。

一冊本を読めば大抵の時は何かもうすっかり心の底まで感激して仕舞う様な事が有って、その度びに自分を情なく思ったり――勿論情なく思いきりでへこたれはしませんけれ共――まあまあと思って見たりします。

世の中の出来事のすべてに対して左様です。

私の心の驚いたり感じさせられたりする事は、善悪の区別もなく、美醜の見境えもないので、私の毎日は何と云う動かされどうしな事でしょう。

或る時は身の置き所のない程自分が小さく見すぼらしいものになったり、そうかと思えば非常に拡がった自分になって、世界中のどんな人にでも謙譲な美くしい自分を現わして行ける心持になったりして居ます。

そして、其那ときには、落着いた心で自分をながめ人を知り、一歩一歩を焦立たず悲しみにおびやかされず進んで行ける様になった二十四五の人が此上なく羨しくなって来るのです。