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どうりょくかくめいとにほんのかがくしゃ
動力革命と日本の科学者
中谷 宇吉郎
「文藝春秋」文藝春秋新社、1955(昭和30)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,399 字 · 27 页
易い。しかし科学というものは、そういうものではなく、既存のものに、少しずつ付け加わって行く、或いは範囲を徐々に拡げて行く性質のものである。そして科学のそういう性質が、科学を人間の生活に役立たせているのである。
科学上の何か新しい大発見があると、世の中が一度に暗転して、まるで違った世界が出来るように思う人がよくある。もしそういうものがあったら、それは魔術であって、科学ではない。科学の歴史の上で、最も劃期的な発見といわれるアインシュタインの相対性原理が、初めて世に出たときは、「万古不易の」ニュートン力学が打破されたかの如く、騒がれたものである。しかしこの新しい力学は、ニュートン力学のいわば拡張であって、変革というと誤解を招き易い性質のものである。天文学は数十年先の日食を、一秒程度の精確さで算出し得る。現在の科学の中には、これほど精密な測定理論は、他にはない。そしてその算出は、今日でもニュートン力学でもって計算されているのである。
科学の力を、魔術的に盲信する傾向は、一般の人々の間だけでなく、科学者の中にも生じ易い。科学はもちろん非常に強力なものであるが、それはあくまで、存在の世界のものである。