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じゅうねんのおもいで
十年の思い出
宮本 百合子
「文章倶楽部」1926(大正15)年8月号
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,123 字 · 7 页
これが大正五年の『中央公論』で、引つづいてぽつぽつ外国へ行くまでに六つ位発表したと思います。どれもなかり枚数の多いもので、殆んど『中央公論』が主でしたが、中には『東京日日新聞』に載せた「三郎爺」などというのもありました。
「三郎爺」は軽いユーモアの味を持たせようとして、それがちっとも現れていないようなところがあって、処女作と一緒に今でも思い出して、何だか可愛らしい気がします。
それからたしか大正八年に米国へ行ったのでした。行く時は父や、父の知人と一緒でしたが、向うへ着いてからは一人残って寄宿舎へ入りました。そして、見たり聞いたり、遊んでばかりいて、勉強なんて少しもしませんでした。あちらにはまる一年位いただけですが、それからずっと、日本へ帰ってからも、全体で四五年は仕事らしいこともしませんでした。別段怠けていたというのではありませんが、家庭を持つと、女の人はどうしても、生活が二つに分かれることはまぬがれないようです。そのために力の入れ方が鈍って、自然弱められるのでしょう。私の知っているどの女の方にも、そういうところがあります。野上さん(彌生子)などにしても、もっと仕事のお出来になる筈の方なのに、やはり子供の世話や、家庭のことに、半ばはとられて、ただ、仕事の方により力の重心の傾く場合と、家事の方に傾く場合とは