轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

じゅうばんざっき

十番雑記

岡本 綺堂

「思ひ出草」相模書房、1937(昭和12)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,745 字 · 16 页

青空文庫

こうして私も妻も女中らも無暗にあわただしい日を送っているうちに、大正十二年も暮れて行くのである。

「こんな年は早く過ぎてしまう方がいい。」

まあ、こんなことでもいうより外はない。なにしろよほどの老人でない限りは、生まれて初めてこんな目に出逢ったのであるから、狼狽混乱、どうにもしようのないのが当りまえであるかも知れないが、罹災以来そのあと始末に四ヵ月を費して、まだほんとうに落付かないのは、まったく困ったことである。年があらたまったといって、すぐに世のなかが改まるわけでないのは判り切っているが、それでも年があらたまったらば、心持だけでも何とか新しくなり得るかと思うが故に、こんな不祥な年は早く送ってしまいたいというのも普通の人情かも知れない。

今はまだ十二年の末であるから、新しい十三年がどんな年で現れてくるか判らない。元旦も晴か雨か、風か雪か、それすらもまだ判らない位であるから、今から何にもいうことは出来ないが、いずれにしても私はこの仮住居で新しい年を迎えなければならない。それでもバラックに住む人たちのことを思えば何でもない。たとい家を焼かれても、家財と蔵書一切をうしなっても、わたしの一家は他に比較してまだまだ幸福であるといわなければならない。