轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
じゅうばんざっき
十番雑記
岡本 綺堂
「思ひ出草」相模書房、1937(昭和12)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,745 字 · 16 页
「震災を無事に逃れた者が、ここへ来て怪我をしては詰まらないから、気をつけろ」と、わたしは家内の者に向って注意している。
そうはいっても、買い物が種々あるというので、家内の者はたびたび出てゆく。わたしもやはり出て行く。そうして、何かしら買って帰るのである。震災に懲りたのと、経済上の都合とで、無用の品物は一切買い込まないことに決めているのであるが、それでも当然買わなければ済まないような必要品が次から次へと現れて来て、いつまで経っても果てしがないように思われる。一口に我楽多というが、その我楽多道具をよほど沢山に貯えなければ、人間の家一戸を支えて行かれないものであるということを、この頃になってつくづく悟った。私たちばかりでなく、総ての罹災者は皆どこかでこの失費と面倒とを繰返しているのであろう。どう考えても、怖るべき禍であった。
その欝憤をここに洩らすわけではないが、十番の大通りはひどく路の悪い所である。震災以後、路普請なども何分手廻り兼ねるのであろうが、雨が降ったが最後、そこらは見渡す限り一面のぬかるみで、殆ど足の蹈みどころもないといってよい。その泥濘のなかにも露店が出る、買い物の人も出る。