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ちはやかんのめいろ
千早館の迷路
海野 十三
「ロック 増刊 探偵小説傑作選」1947(昭和22)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,829 字 · 50 页
それならば、どこかに入れる口がある筈ですわねえ」
春部は、中に入らずには引返さない決意と見える。
「その理屈は尤もです。ではその実際的な入口を探しましょう。窓からでも入るのかな」
二人は窓を見上げながら、もう一度千早館の周囲を廻ってみた。
ところが、奇妙なことに、この建物には窓というものが極めて少かった。この大きな建物に、たった六つの窓しかついていなかった。しかもその窓は、背の届くようなところにはなく、地上から四五十尺もある高いところにぽつんぽつんとついていて、それも縦に長い引込んだ窓であって、明かりを取る窓というよりも建物の飾りについている釦のように見えた。
そしてその窓という窓が、いずれも外から鎧戸でもってぴったりと閉っていて、空気はもちろん明かりも、中へは入るまいと思われた。従って、その窓を通じて、この建物の中に入ることは、まず不可能だと思われた。
「どこにも、忍びこむのに都合のよい窓がありませんね」
館の裏手の雑草の中に立って、帆村はがっかりした声を出した。
「でも、どこかに入口がある筈ですわ」
春部は、先と同じことをいった。
それから二人は、黙したまま、その場に突立っていた。