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ちはやかんのめいろ
千早館の迷路
海野 十三
「ロック 増刊 探偵小説傑作選」1947(昭和22)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,829 字 · 50 页
「電線があのとおりぷっつり切れています。千早館への電気の供給は、あのとおり電線が切られたとき以来停っているのですよ」
「すると、あの建物の中は電灯もつかないから真暗なわけね」
「ま、そうです。従って、さっきわれわれが聞いた音は、配電会社には関係のない音だということになる」
「そんなことが何か重大な事柄なんですの」
「いや、それは私の頭を混乱させるばかりです。うむ、ひょっとするとこれもわれらへの挑戦かもしれないぞ」
「挑戦ですって、誰からの挑戦? そんなことは今までにちっとも仰有らなかったのに……」
「それはそうです。この千早館のまわりをぐるぐる廻っているうちに、ふとそれに気がついたのです。春部さん、これはいよいよ油断がなりませんよ。さあ、どしどしすることを急ぎましょう」
6
帆村は急に先を急ぎ出した。
彼は千早館の前に通っている道を奥へ取って、老婆の話にあった、聖弦寺を一覧した。それは今にも化けそうな荒れ寺であった。ぷうんとする黴くさい臭気を犯して、中へ入ってみたが、どの部屋もみな畳はみんな腹を切ってぼろぼろでここで炊事をしたり泊ったりすることは、出来ないことを確めた。