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うまいち

午市

宮本 百合子

「婦人公論」1922(大正11)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,146 字 · 17 页

青空文庫

おせいが一緒だとは気が付かず、何か云おうと唇まで出かかった言葉を、ふいと飲み込んで、そのまま素知らぬ顔をする男もある。

行くうちに、彼女は何となく腹立たしいような気分になって来た。

あの男達は、一体どんな心持であんなことをやっているのだろう。胸位まで来る台を控え、パチパチと扇を鳴らし、或る者はすっかり禿げた頭を燈火に照しながら、眼を動して、何か、絶えず求め漁っている。恐らく家があり、妻子がある、あれも夫であり父親であるのかと思うと、おせいは訳の分らない辛い心地がした。

またこの特殊な世界の生活を、倫理上の「問題」とし、同性の「問題」として、考え論究している種々な女の人々は、自分の眼で、この格子と、絵姿と、奇妙な静寂を見た時、どんな心持に打れたのだろう。

おせいには、これらの光景から、何か纏り、組織立った考えが照り返して来るのは、二分も三分も、或は一日も後のことらしく感じられた。

何か読んだものや、聞いたことから、頭で拵えた観念を抱いて来ない以上、素直な心で、この有様を見たら、先ず、これが真実、自分と同じ心を持ち、自分と同じ肉体を持った女、人間に、何か係わったことなのかと怪しみ疑わずにはいられない気がするのではないだろうか。