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はんのすけしゅうげん
半之助祝言
山本 周五郎
「キング」大日本雄辯會講談社、1951(昭和26)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,997 字 · 44 页
そこでも同じくらい待ち、第三の取次ぎが第三接待へ導いた。こうして第五の接待の間へ通されたとき、前田老職がようやく愁眉をひらいたという顔で、
「やれやれ有難い、この接待まで辿り着けば、お眼にかかれる、今日はまことに幸運だ」
こう云って汗を拭いたのには、半之助は少なからず驚かされた。聞いてみると、第四の接待の間まで来て、そこで「面会時間が切れた」といわれる例が多いのだそうである。次席家老である甚内でさえ、そんなふうに三時間も待たされたうえ、時間切れで会えずに帰ることがたびたびあるということであった。
「――たいへんな代物だな、それは」
半之助は口の中でこう呟いた。甚内は吃驚して、彼の袖を引きながらしっと制止した。
やがてようやく、二人は客間へ案内された。書院造りの十二畳の座敷に、床間を背にして城代は坐っていた。右側に蒔絵の大きな文台があり、左に青銅の部屋あぶりを置いて、そして当人は厚い敷物の上に坐っていた。こちらにはむろん敷物などはない。
――まるで殿さま気取りじゃないか。
こう思ってふと図書助を見たとたん、半之助はわれ知らずあっと声をあげた。その声で図書助はこっちを見たが、これまたううと妙な声をもらした。