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はんのすけしゅうげん

半之助祝言

山本 周五郎

「キング」大日本雄辯會講談社、1951(昭和26)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,997 字 · 44 页

青空文庫

五

なんて、……ばかばかしい」

彼は巧みに立原平助の口まねをした。

「――わが藩の城下の東北には竜神川が流れておる、こう云ってごらんなさい、実に堂々として、百万石の大藩のおもむきがあるじゃないですか、これをもし、東北には堰がある、などと云ったらどうでしょう、まるで申しわけでもしているようじゃありませんか、……かれらにはこのくらいの理窟もわからない、したがってこの堤防の意味なども、ぜんぜん理解ができないわけです」

「堤防についてなにか申しておるのか」

図書助が初めて振返った。

五

「申すもなにもなってないです」

半之助はちらと左のほうを見た。

そちらでは二人の下僕が火を焚いて頻りに弁当の支度をしていた。こちらの話など聞えもしないといったふうに、……半之助はにっと唇で笑い、さらに元気な声で言葉を継いだ。

「やれ金が何十万何千両かかったとか、そのための重税や土地立退きで百姓が何軒かつぶれ、誰が首を吊ったとか誰が娘を売ったとか、やれ一家離散の悲劇があったとか、くだくだと泣き言ばかり並べるんです、しかもこの堤防の意義についてはなにも知らず、知ろうともしないんですからね、まあひとつごらんになって下さい」