轻松读懂日语经典作品
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まんじ
卍
谷崎 潤一郎
「改造」改造社、1928(昭和3)年3月~1929(昭和4)年4月、6月~10月、12月~1930(昭和5)年1月、4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 133,618 字 · 258 页
――と、自分のために避暑に行くのん止めてしまいなさったのん気の毒やとか、姉ちゃんのお蔭で淋しい思い慰めてもろて、大層有難い思てるとか、あんまり口数利きなさらんと殊勝らしい聞えるようにあんじょういいなさって、団扇で帯の上のとこ隠すようにしてなさるのんですが、お春どんが気イ利かしてくれたと見えて、昼間でも電気点さんならんような薄暗い部屋の一番隅の方にすわってなさって、なんせ風通しの悪い上にお腹にいろいろなもん詰めてなさるよって、ずくずくに汗かいてはあはあ息してなさる恰好いうたら、いかにも本物らしいて、「巧いこと芝居してなさるなあ」思いましてん。
夫は直きに座ア立って、「えらいお邪魔しました、どうぞまたお出かけになれるようになったら遊びに来て下さい」いうて、「もうおそいさかいお前も一緒に帰ったらええ」いいますのんで、「何ぞ訳あるに違いないよって今日はこれで帰る。明日きっと待ってて頂戴」と光子さんにそうッというといて、しぶしぶ連れられて出て来ましたら、「バスに乗って行こ」いうて四つ橋の停留場い出て、そいから阪神で家い帰るまで、夫は不機嫌に黙ってしもて、何いうても生返事しかせえしません。