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なんばんひわもりうこんまる

南蛮秘話森右近丸

国枝 史郎

「少女倶楽部」1927(昭和2)年4月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,869 字 · 112 页

青空文庫

と、ムーッと弁才坊……」

「そうかそうか、斃ったのか?」こう訊いたのは猪右衛門。

「云うにゃ及ぶだ」と早熟た口調、猿若はズンズン云い続ける。「で、窓から忍び込み……」

「偉い偉い、探したんだね」今度は玄女が褒めそやす。

「そうともそうとも探したのさ。目に付いたは人形だ」

「人形なんかどうでもいい、手に入れたかな、唐寺の謎?」

猪右衛門短気に声をかける。

「急くな急くな」と猿若少年、例によって早熟た大人の口調、そいつで構わず云い続けた。

「驚いちゃアいけねえ、喋舌ったのさ。うんにゃうんにゃ呶鳴ったのさ。喚いたと云った方が中っている。『唐寺の謎は胎内の……』――人間じゃアねえ人形だ! 人形がそう云って喚いたのさ。すると隣室から民弥さんの声だ。『どうなさいました、お父様』――つまりなんだな、目を覚ましたのさ。『ワーッ、いけねえ、化物だあ!』『いよいよいけねえ、逃げろ逃げろ!』――スタコラ逃げて来たってものさ。ああ驚いた、腹も空いた、一杯おくれよ、ねえご飯を」

「ご飯は上げるが唐寺の謎は?」訳がわからないと云うように、訊き返したのは玄女である。

「唐寺の謎? 俺ら知らねえ」