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なんろ
南路
宮本 百合子
「太陽」1922(大正11)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,813 字 · 63 页
紐育の女事務員や売子のように、濃厚な白粉気はなく、いかにも身軽な白衣に素頭の若い女達が、一種独特の活溌さ、或は、常に侮蔑する対照を持ち馴れたものの粗暴さで、漫歩している。
止まった自動車は、歩道の傍には寄せられず、却って車道の真中に、列を作って眠った大きな甲虫のように輝きながら並んでいる。――
自分は強いて感興を湧起すように、彼方を眺め、此方を見して歩いた。けれども、一向面白くない。心のしんでは、ちっともこんな処を歩いていたくないのに、ほかにどこにも居処のないという、漠然とした寂寥で、我々は捗々(はかばか)しく話しもしないのである。
列車が駛り、その進転に従って、いやでも外界が注意を他に牽く間、私共は、殆ど強制的に懶さを晴し、自然や村落を観察する。けれども、強いて引張るものがなくなると、我々は互の顔を見る。心を感じる。そして、家のない、不安な、行く処まで行ってしまわなければ、到底落付けない旅路を思い知るのである。
午後七時に、また車室の座褥(クッション)が我々を迎えるまで、二人は、云い難い心持を互に堪えながら、本屋を訪ね、図書館に行きして、時を費した。