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なんろ
南路
宮本 百合子
「太陽」1922(大正11)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,813 字 · 63 页
冬枯れ時でも、午後になると、公園を瞰下す歩道の胸墻(パラペット)近くや、公園に入る灌木の茂み、段々の辺には、無数の人が往来した。皆、ゆっくりと日光を浴び、遠い広い海のような河口から渡って来る新鮮な微風を吸い、楽しむように見える。
女や子供、年寄が多く、片足で飛び飛び一輪車を廻して来る小児、まるで動物と思えないような小犬を、華奢な鎖で引つれて、ファーコートの間から、仄かな花の香りを暖い午後の空気に残して行く婦人。
そぞろ歩きする沢山の人と色彩との間を抜けて、私共は、或る、日本人の会館へ行った。自分達の今いるアパートメントは、何時どんな都合で引移るか分らない。その後で、故国から来る郵便が、まごついては困る。そういう心配のなくて済むように、引越しなどのない宗教団体宛に、手紙を受取っていたのである。
そこで、私共は、予期しない父からの長い角封筒の書簡を見出した。いつもは、きまって母が書いてくれていた。父の分までも代表して、彼女の大きい非常に曲線的な文字が表紙も中も埋めているのが常なのである。私は、
「まあ! お父様から?」
と、思わずそこで封を切った。そして、読みながら、屋外に出、歩道へさしかかった。