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ききにおけるりろんてきいしき

危機における理論的意識

三木 清

「改造」1929(昭和4)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,790 字 · 16 页

青空文庫

思想の問題は今や思想の危機の問題として現われている。人々は到るところ、あらゆる機会において、思想の危機について語りかつ叫ぶ。しかし彼らは自己の語りつつあるもの、叫びつつあるものが何であるかを理解しない。いな、みずから理解することなく、理解しようと欲することなく、語りかつ叫ぶということがそれ自身また思想の危機のひとつの特徴である。思想の危機の叫びのうちに表現されるところのものは、理論的意識の欠乏であり、まさに「思想の貧困」である。けだし事物の本質を明らかにして思想を発展せしめることがかく叫ぶ者の目的でなく、彼らの目的はかえって正反対のものである。思想の危機を叫ぶことによってあたかも思想を窮迫せしめ、空虚ならしめ、かくて思想そのもののためでなく、むしろまったく他の意図のために謀ろうとすることが彼らの目的である。このときにあたって真実に思想を求める者は、彼らの叫びに迷わされ、驚かされ、恐れさせられることなく、自己の理論的意識をいよいよ鋭利ならしめ、果敢ならしめねばならぬ。そのためには思想の危機が本来いかなる意味のものであるかを明瞭にすることがなによりもまず必要である。