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また、いえ
又、家
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年5月30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,120 字 · 13 页
電車の中でも、口を開くと、自ら家のことになる。
家主だと云う質屋を、角の交番の巡査に訊いてAが入って行く。
自分は、程近い停留場に待って居た。場所をきき合わせる位と思ったのに、なかなか出て来ない。歩道に面した店の小僧など、子守などは、不思議そうにじろじろ自分を見る。
待ち、疲れた時分に、やっと、Aは、山高の頂を揺り乍ら現れた。その顔を一目見て、自分は余り思わしくないことを感じた。
「どう?」
自分は彼の方に近より乍ら訊いた。
「さあ、とにかく見ようじゃあないか」
家と云うのは、つい近くの、何々質店、信用、軽便、親切と、赤字で書いた大きなアーチ形の広告門をくぐって行った処に在った。
陰気な、表に向った窓もない二階建の小家の中からは、カンカン、カンカンと、何か金属細工をして居る小刻みな響が伝って来る。一方に、堂々たる石塀を繞し、一寸見てはその中の何処に建物が在るか判らない程宏大な家が、その質屋だと云うのである。
勿論、此家が駄目で、我々は、浮かない表情で戻ったことは明かであろう。
夜具風呂敷の地を買って、いつ引越しでも出来るように、縫わせたり、荷物自動車を調べて見たり、相変らず、私の捜索材料は、唯一つ、毎朝の時事がある許りであった。