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はんこう

反抗

豊島 与志雄

「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页

青空文庫

」

「これはいいや」と横田が応じた。「全く顔立は自分でどうにも出来ない。」

保子は一寸腑に落ちないような眼付をしたが、それから俄に笑い出した。

「酒を飲む人に赤鬼と青鬼とあるんですって。あなたは飲むとなお黒くなるから、まあ黒鬼ね。井上さんはすぐに赤くなるから赤鬼。私が青鬼になると丁度いいわね。少し飲んでみましょうか。」

「青鬼は御免だよ、後の世話が厄介だから。赤鬼の方がいい。」

「私そんなに赤くなっていますか。」と周平は云った。

「ええ真赤よ」と保子が答えた。「あなたは不思議ね、すぐに赤くなって、それからいくら飲んでも平気だから。」

実際周平は、顔が赤くなりながら少しも酔を覚えなかった。頭の中が冴え返ってくるばかりだった。そして、室の中の光景が、硝子をでも通して眺めるように、淋しくひっそりと感ぜられて仕方がなかった。その冴えた淋しさが更に自分の方へ反射してきた。

彼はいい加減に食事を済して縁側に出た。星も見えない魔物のような夜だった。眼をつぶって暫くじっとしてると――隆吉がやって来た。彼はいきなりそれを捉えて、膝の上に抱いてやった。静かな涙が出て来た。

二十六