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はんこう

反抗

豊島 与志雄

「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页

青空文庫

「私がもしそうだったら、あなたはどうして?」

「どうもしないさ。」

「そうでなかったら?」

「どうもしないよ。」

「それじゃ訳が分らないじゃないの。」

「分らないさ。」

そして彼は黙り込んでしまった。何を不機嫌に腹立ってるんだと自ら浴せかけてみたけれど、妙にこじれた気持が納らなかった。お清になお二三度言葉をかけられたが、返辞をしなかった。

池を一周してしまうと、お清は突然立ち止って云った。

「何か食べましょうか。私疲れちゃったから。」

周平は機械的に首肯いてみせた。どうとでもしろという気になっていた。

二人は電車通りに出て、すぐ其処の鳥屋へはいった。

三十六

通されたのは奥まった六疊の室だった。お清はがっかりしたように、肩掛を丸めて床の間の上に抛り出しながら、餉台の前に膝をくずして坐った。お召の着物の上に金紗の羽織をだらりとつけていた。淡緑色の無地の繻絆の襟から、痩せてるわりに肉のむっちりした真白い頸筋を伸べて、周平の方へ微笑みかけた。

「ああ、これでやっと落着いたわ。」

然し周平は落着かなかった。明るい電灯の光りに輝らされると、彼女の服装に比べて、自分の垢じみた銘仙の着物が、如何にもみすぼらしく思えてきた。