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はんこう
反抗
豊島 与志雄
「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页
外へ出る時には、たとい和服の時にでも、学校の帽子よりその多少子供子供した而も高慢ちきな毛糸帽を、周平は好きだったのである。隆吉にはそれがよく似合った。
「叔母さん、行ってきますよ、井上さんと。」
「ええ。」
と答えて、保子がじろりと見上げたのを、周平は慌てて押被せるように云った。
「実地教育なんです。」
周平は保子の眼付を見ないで、その口元の微笑みだけを眼に止めて、先に立って外に出た。
そして実際彼が隆吉を連れて行くのは、博物館や動物園や植物園や、淋しい神社の境内などへであった。一度美術展覧会へ行ったこともあるが、隆吉が変に執拗な眼付で肖像画をばかり探し求めてるのを見て、周平は不気味な不安を感じた。それから展覧会へはもうはいらなかった。もっと呑気な場所が好ましかった。博物館にはいると、門内の庭園を長い間ぶらついた。動物園では、水にもぐってる河馬が時々水面にのっそり顔を出すのを、何度も待ち受けて佇んだり、昼寝をしてる獅子が身を動かすのを、ベンチに腰掛けて長い間待っていたりした。が殊に、植物園が一番静かでよかった。
西に傾いた弱々しい日脚の、僅かな暖かみを肩先に惜んで、ゆっくり坂を上ってゆくと、左手に、粛條たる平地が一面に日の光りを受けていた。