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はんこう
反抗
豊島 与志雄
「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页
築土八幡の前を通り過ぎて、右へ曲った。
「暗いから危いわよ。」
その言葉が、周平の耳には調子外れに響いた。彼は半ば眼を閉じがちにして、彼女の導くままに身を任せた。
暗い狭い坂途をぐるぐる曲った後、やがてお清は立ち止った。絵草紙や駄菓子などを売っていそうな家の前で、煤けた戸が立ててあった。頑丈な表構えの隣家との間に、漸く人がはいり込める位の狭い路次があった。お清は周平の肩から肩掛を引ったくりながら、目配せと一緒に云った。
「汚い家よ。」
路次の奥に、駄菓子屋の裏口と思われる辺に、一枚の開扉があって、外から海老錠がかかっていた。お清は帯の間から鍵を取出して、それを開いた。中にはいってこそこそやっていたが、電気の釦をひねったとみえ、上の方からぼーっとした光が射してきた。狭い急な梯子段と板の間が照らし出された。
「何をしてるの。おはいりなさいよ」と彼女は云った。
それでも周平はまだ外に佇んでいた。
「今時分、もう仕様がないじゃないの。」
周平はやはりじっと立っていた。
「焦れったい人ね。おはいりなさいったら!」
三度目にそう強い調子で促されて、周平は初めて中にはいった。