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はんこう
反抗
豊島 与志雄
「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页
読み返しもしないで封をしてしまうと、堪え難い気持になった。
最後に只一度、保子へ逢いたかった。然しその場面を想像すると、自分自身が恐ろしくなった。どんなことになるか分らない気がした。
彼は凡てを踏み蹂るような心地で、女中を呼んで手紙を出さした。急に寒気がしてきた。惨めな室の中を見廻してから、床を敷いて寝た。身動きも出来ないほどの疲労を全身に覚えた。
暫く眼を開いたり閉じたりしているうちに、彼はいつしか眠った。午の食事を女中が運んできたのを、夢心地で怒鳴りつけるように郤けて、又白けた眠りに陥った。
三時頃、村田が訪ねて来たため、彼はその眠りから本当に覚された。頭が妙にぼんやりしていた。村田を通さしておいて、床の中から起き上らなかった。
「このままで失敬するよ。」と彼は云った。
「ああ。だがどうしたんだい。」
「少し寒気がして、やたらに眠いんだ。」
馬鹿々々しいことを云ってるような気がして、彼はじっと天井を仰いだ。
村田はその枕頭に坐って、女中が持って来た火鉢の火を弄っていたが、突然云い出した。
「君怒ってやすまいね。……昨晩は僕が悪かったよ。然し君の云い方もいけなかったんだ。