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はんこう
反抗
豊島 与志雄
「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页
而も何等まとまった考えをしてるのではない。頭の働き方が全く機械的になつている。種々の射影がいつも同じような姿で浮んでくる。俺の頭はそれを機械的に取り入れて、また機械的に吐き出してしまう。永久につきない反応作用を営んでるのと同じだ。
Y子もE子も俺にとっては過去の人物だ。母と隆吉とは二人だけで生きてゆける。それを俺はどうしようというのか?
敢然と歩いてゆくべき途が一筋ほしい。現在の停滞した状態をこね起すべき梃がほしい。何よりも先ず、頭の中だけに狭められたこの息苦しい世界を、豁然とうち拡げることだ。視力を恢復することだ。精神的窒息は最もたまらない。
夜、〇・〇〇四に当る分量を服用する。
十一月十二日――朝、〇・〇〇四をまた服用する。
異常な感覚を覚ゆる。天地が躍り立つようだ。空がこの上もなく澄みきっている。凡ての物が閃きながら揺いでいる。赤や青や緑の光線が縦横に入り乱れている。距離が妙に縮まって見える。気圧が極度に低くなったような心地。
歩いていると、膝関節に怪しい感じがする。足の運動が、非常に力強いわりに重々しい。変に自分の意志とそぐわない。いつ棒立ちになって動けなくなるか分らない気がする。