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はんこう

反抗

豊島 与志雄

「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页

青空文庫

」と保子は云って、ぽつりと小さな皺を眉根に寄せながら、なみなみと注いだコップに唇をあてた。

「あちらでは、どんなに動き廻っても平気だったけれど、東京に帰ってくると、身体がだるくて仕様がないわ。やはり海岸はいいのね。……あなたも少し行ってきちゃどう?」

そして彼女はまじまじと周平の顔を見戍った。

そういう彼女には、身体の線がなよなよとくずれて、持て余したような柔かな肉体があった。それを彼女は横坐りにした腰の上にくねらして、片腕をまくってみせたりした。

「こんなに真黒になってよ。海にはいった初め二三日のうちは、ひりひりして仕方なかったけれど、それからむやみと痒くなって、掻く度に薄い皮がむけるのよ」

肩の上で一線を劃して、それから奥は真白に海水着の跡がついていた。

「奥さんは泳げるんですか。」と周平は尋ねてみた。

「ほんの少しばかり。でも泳ぐのは第二で、波にもまれてるのがいい気持よ。それから砂浜の上に寝転んだり、細帯一つで室の中にごろごろしたりして、それは呑気よ。帰って来ると、帯をちゃんとしめたりしていなけりゃならないので、何だか窮屈で仕様がないわ。身体がだらしなくなってしまうのね。