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おじ
叔父
豊島 与志雄
「改造」1925(大正14)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,585 字 · 24 页
喜代子の顔に真剣な気脈が動いて、それが美しくぱっと輝いたような気がしたのだった。
中野さんは変に腹がたって来た。
「まあ然し、何でも若いうちのことだ。」
そして眼瞼のたるんだ眼をぎろりとさした。
「君は酒はいくらも飲めそうだが、杯の持ち方は酒飲みらしくないね。こんな風に持たなくちゃまずいよ。」
三本の指をそえた人差指と親指とで、軽く杯を挙げてみせた。
「あ、そうですか。」
笹部は平気で、示された通りの持ちようを真似た。その手先がやはり不均合に大きかった。
「わたしは少し観相の方を研究してみたことがあるが、君の相は……中以上のように思える。まあしっかり勉強するんだね。」
最後の一句をとってつけたように早口で云って、中野さんははははと笑った。
それが不意に、一座の空気を一変さしてしまった。笹部はじろりと中野さんの方を見て、それから執拗な眼付を膝頭に落した。喜代子はぽーっとした赤味を頬に上せた。もう出来上った一人前の女の顔付だった。
「叔父さま、昨日お願いしましたことは……。」
「うむ、聞いてあげるよ。」
中野さんは云い捨てて立上った。足元が少しふらついていた。それをどしんどしんと踏みしめて、奥の室から紙幣の束を持ってきた。