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ふるきミニエチュア
古き小画
宮本 百合子
「小樽新聞」1924(大正13)年1月14日~3月9日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 70,298 字 · 140 页
熾だった燎火も消え、処々に、低く篝火が燃えていた。周囲に、哨兵の起きている姿が黒く見えた。四辺一帯寝しずまって、闇の中から、入り混った幾つもの人間の深い寝息、微かに馬が脚をずらす響などが伝わって来る。息の音ほかしない地面から見上げると、空に燦く無数の星が実に活々、命あるもののように見えた。瞬く毎に、サッサッ、サッサッという活動の響がふって来そうに思われる。
ルスタムは目を移して、ずっとツランの陣を眺めた。彼方にも、極僅しか篝火は見えなかった。後に樹林を負うている故か、まるで暗く、高地全体が山の懐に消え込んだように見えた。次第に目が闇になれると、ルスタムは、ツラン方に光る篝火の、すべての遠近を区別出来るようになった。一つのかなり大きい燃火は、どうも太陽のあるうち、見たあの大天幕の前あたりで燃えているらしい。ルスタムは、自分で心付かない、必要以上の緊張でよくよくその点を凝視した。彼は、目に見えない生きものが、心臓の中で微かにひくひくと身動きしたような気がした。確にその篝はあの天幕の近くで、瞳を凝すと、天幕の斜面の一部分がその明りに照り出されているのも見わけられるのだ。