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ふるきミニエチュア
古き小画
宮本 百合子
「小樽新聞」1924(大正13)年1月14日~3月9日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 70,298 字 · 140 页
火かげにかがみ込んで、分配されたそれらの酒や煎餅を賭け、一心に、肱で邪魔な見物をつきのけながら、骰子(さいころ)を転がしている者もある。
ルスタムは、日暮から王の天幕にいた。けれども、彼は何となく四辺の空気になじめず落ちつけない心持がした。上機嫌な王の酔った声をききながらも彼はちらり、ちらりと、夕やけにきらめいていた兜の光を思い出した。それを思い出すと、ルスタムは、妙に見のこして来たものがあるような気持がした。そして、天幕の裡の酒と香の匂いが鼻につき、居心地わるく感じるのであった。
夜が更けるにつれ、段々空気は重く、濁って来た。王も疲れが出たと見え、十文字脚の腰架の上で時々こくり、こくりと居睡りを始めた。ルスタムは、ギーウと低声にぼつぼつ話していたが、それを見るとそっと腰架をずらせて立ち上った。彼は、目顔でギーウに、自分の去ることを示した。そして垂幕をかかげ、王が目醒るのをおそれるように、いそいで天幕を出た。
二十九
一歩外に出ると、ルスタムは、思わず胸一ぱいに息をすい、心からのびのびと伸をした。天幕の中と違い、夜の野天の限りない広さには、すがすがしい、涼しい空気が満ちていた。