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ふるきミニエチュア

古き小画

宮本 百合子

「小樽新聞」1924(大正13)年1月14日~3月9日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 70,298 字 · 140 页

青空文庫

高地のかげがずっとのびて、彼方にはまだ重い夜が這っているようであった。すると、一人が仲間の胴をつき、「おい、あれは何だ?」と訝かしそうに、高地の斜面の一点をば指した。何か黒い平たいものの形が見える。二人は暫く見ていてから、そろそろ其方に向って降りて行った。近くまで来てそれが何かとわかると彼等は愕いた眼を突き出して顔を見合せた。スーラーブの扈従(こしゅう)の一人に違いない少年が、何かにたたきのめされたように硬張って死んでいる。二人は、速足に高地を引かえした。そして、伍長を案内して来た。話をききつけた者は、皆ぞろぞろ後をついて来、死体を見ると、目を瞠って、彼等の命令者の顔を見つめた。皆は、僅か十六のガワが、どうして夜の間にこんな処でたおれたか、訳がわからなかった。何処にも傷が見えなかった。彼は病気だったのか。何かの悪鬼が陣地で一番若い彼を狙って生霊を喰ったのではないか。がやがやしているところへ、スーラーブの姿が見えた。兵等は円くかたまった輪の一部を開いて、スーラーブを中に入れた。伍長は、切口上で、二人の卒がこうなっているガワを発見したことを報告した。