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どうほう

同胞

豊島 与志雄

「中央公論」1924(大正13)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,713 字 · 32 页

青空文庫

それから二人の年齢を比べてみると、茂夫の方が十一月余り年下だった。

「ねえ、僕の家に遊びに来ない。」と恒夫は云った。「黙ってさいいりゃ、誰にも分りっこないよ。」

茂夫は急に眉根を曇らせた。

二人はもう江戸川の岸を歩いていた。桜の枝に一杯蕾がついていて、所々には花を開いてるのもあった。薄濁りのゆるやかな流れは、物の影を凡て呑み込んでしまって、表面だけにきらきら日の光を受けていた。

大曲まで行った時、茂夫は突然立止って、改まった調子で云い出した。

「僕はもう帰ります。」

恒夫は驚いて、も少し歩こうと勧めてみたが、茂夫は川の面に眼を据えて、聞き入れそうな様子もなかった。

「此度は僕の方から、学校へ尋ねてゆくか、手紙をあげるかしますから、それまで待っていて下さい。あなたからいらしちゃいけません。」

その時彼の顔から眼のあたりに、非常に憂鬱そうな曇りがかけた。見ていると、その曇りがふーっと拡っていって、彼の浅黒い顔全体を包み込んでしまうように思われた。恒夫は一人投り出される気がして、口を噤んで幾度も首肯いてみせた。

それでも二人は伝通院前まで一緒に歩いていった。