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どうほう
同胞
豊島 与志雄
「中央公論」1924(大正13)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,713 字 · 32 页
背中にさす春日がぽかぽか暖いわりに、地面を流れる空気が妙に薄ら寒かった。
「じゃ此度は屹度、君の方からやって来るか手紙をくれるかするね、屹度。」
「ええ屹度します。よく考えてから……。」
茂夫は一つ丁寧にお辞儀をして、大塚行きの電車に飛び乗った。恒夫は上野の家まで歩いて帰った。
何を考えることがあるんだろう……と恒夫は思った。然し茂夫の方が自分よりは、いろんなことを多く知っており、いろんなことを深く考えていて、ずっと豪いようにも思われた。憂鬱な顔をしたり大人びた言葉使いをしたりするのは、そのためかも知れなかった。……が、それは非常に淋しいことだった、心惹かれる淋しいことだった。
家に帰ると、風邪をこじらして寝ついてる祖母の所に、丁度医者が見舞って来ていた。
「お祖母さん、もう桜の花が咲いていますよ。」と恒夫は不満そうに云った。
火鉢の上の洗面器から立昇る湯気の向うから、祖母はしょぼしょぼした眼で見返した。その様子が、恒夫には何だか親しみ薄く感ぜられた。
恒夫は茂夫に逢うのをしきりに待った。茂夫の広い高い額とその下の上目がちな小さな眼とが、頭の中にまざまざと残っていた。