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どうほう
同胞
豊島 与志雄
「中央公論」1924(大正13)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,713 字 · 32 页
」
「ええ。」と恒夫は答えた。
一寸沈黙が続いた。祖父がまた強く煙管をはたいた。
「それでは、もう何も云いませんから、今日学校が済んだら、すぐに茂夫さんを連れていらっしゃい。……よござんすか。」
「ええ。」
「すぐに連れてくるんだぞ。」と祖父が大きな声で怒鳴った。
恒夫は喫驚して、何にも尋ねることが出来ないで、風に吹き飛ばされる木の葉のようにして出て行った。
母が玄関まで送って来た。
「茂夫さん一人だけですよ。向うの家の人には何にも云ってはいけませんよ。」
恒夫には合点がゆかなかった。どうして分ったんだろう……茂夫を連れて来てどうするんだろう……何で祖父があんなに怒ってるんだろう……祖母の病気がひどいのかしら、それと茂夫と何の関係があるんだろう……。そこまで考えてきた時、恒夫は急に晴れ晴れとした所へ出たような気がした。僕と茂夫とを表向き立派に兄弟にしてくれるのかも知れない……そして茂夫の、高い広い額と、憂わしげな上目がちの眼と、綺麗な器用な指先とが、まざまざと眼の前に浮んできた。
恒夫は学校で待ってることが出来なかった。三時間目がすむと、こっそり逃げ出して豊山中学へ行った。