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めいじんじごく
名人地獄
国枝 史郎
「サンデー毎日」1925(大正14)年7月5日~10月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,286 字 · 301 页
「うん、面白い、張り合いがある」かえってこんなように思ったものであった。
変な様子をした二、三人の者が、邸の周囲をさまよったり、夜陰堀の中へ石を投げたり、突然大勢の笑い声が、明け方の夢を驚かしたり、そういったような細々しい変事は、幾度となく起こっては消えた。
だが攻めては来なかった。で、邸内の人々は、次第にそれに慣れて来た。だんだん油断をするようになった。
お艶とそうして銀之丞との恋は、この間にも進歩した。
ところで二人のその恋を、快く思わない人間が、邸の内に一人あった。醜い例の丑松で、彼は内々蔭へまわっては、二人の悪口をいうらしかった。しかし恋する二人にとっては、そんなことは苦にもならず、問題にしようともしなかった。
こうしてまた日が経って、やがて初雪が降るようになった。
深い深い水の底で重々しく開いた扉の音
そのうちだんだん銀之丞に、ある疑問が湧くようになった。
「それにしてもゆうちょうな敵ではないか。いつ攻めて来るのだろう? それに邸内の人達も、変に最近ダレて来た。全体が一向真剣でない」
一つの疑いは二つの疑いを呼ぶ。
「邸内の構造も不思議なものだ。