轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
めいじんじごく
名人地獄
国枝 史郎
「サンデー毎日」1925(大正14)年7月5日~10月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,286 字 · 301 页
ひどくきさくな調子であった。
「へい、銚子まで参ります」
「うん、そうか、銚子までな」こういうと武士は坐り込んだが、それからじっと平八を眺め、「なんに行くな、え、銚子へ?」
「へい、いえちょっと、仕事の方で。……それはそうとお武家様も、やはり銚子でございますかな?」
「いやおれはすこし違う」武士は変に笑ったが、「ところでお前は何商売だな?」
「へい、船大工でございます」こうはいったが平八は、気味が悪くてならなかった。
「なに船大工? 嘘をいえ」武士はいよいよ変に笑い、「これ、大工というものはな、物を見るのに上から見る。ところがお前は下から見上げる。アッハハハ、これだけでも異う。どうだ、これでも大工というか?」
これを聞くと平八は「あっ、しまった」と胸の中でいった。武士の言葉に嘘はない。すべて大工というものは、棟の出来栄へまず眼をつけ、それからずっと柱づたいに、土台の仕組みまで見下ろすものであり、それが万事に習慣づけられ、人を見る時には頭から眺め、足に及ぼすものなのであった。これに反して与力、同心、岡っ引きなどというようなものは、何より先に足もとを見、その運びに狂いがないかを、吟味するのに慣らされていた。