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めいじんじごく
名人地獄
国枝 史郎
「サンデー毎日」1925(大正14)年7月5日~10月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,286 字 · 301 页
急に森田屋は乗り出して来た。
「ご禁制の二千石船を、こしらえている者がありますので」
「それをお前は知ってるのか?」平八は思わず乗り出した。
「知ってる段じゃございません。私らはそいつらと張り合ってるので」「誰だな? そいつは? え、誰だな?」「赤格子九郎右衛門でございますよ」
これを聞くと平八は、しばらく森田屋を見詰めていたが、「うん、それでは赤格子は、日本の土地にいるのだな」「ハイ、いる段じゃございません。赤格子本人がやって来たのは、今年の秋のはじめですが、手下の奴らはずっと前から、日本へ入りこんでいたのですな。そうして連絡を取っていたので」「で、今はどこにいるのだ?」「へい、銚子におりますので」「ううむ、そうか、銚子にな……そこで大船を造っているのだな? ……なんのために造っているのだろう?」「莫大もない財産を、持ち運ぶためでございますよ」森田屋は居住居を正したが、「実はこうなのでございます。十数年前大坂表で、赤格子九郎右衛門一味の者が、刑死されたと聞いたとき、そこはいわゆる蛇の道は蛇で、眉唾ものだと思いました。はたしてそれから探ってみると、刑死どころかお上の手で、丁寧に船で送られて、南洋へ渡ったじゃございませんか。