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めいじんじごく

名人地獄

国枝 史郎

「サンデー毎日」1925(大正14)年7月5日~10月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,286 字 · 301 页

青空文庫

と、ヒラヒラと人が下りた。すると小船は帰って行った。と、またその船が岸へ漕がれ、ヒラヒラと人が岸へ飛んだ。これが数回繰り返され、一百人あまりの人数が、海から岸へ陸揚げされた。森田屋の部下の海賊どもであった。

賊どもは一団に固まった。真っ先に立った人影は、秋山要介正勝で、櫂で造った獲物を提げ、一巡一同を見廻したが、重々しい口調でいい出した。

「森田屋は船へ残すことにした。海路を断たれると危険だからな。……さて市之丞前へ出ませい」声に連れて一つの人影が、ツト前へ現われた。「赤格子九郎右衛門はそちにとり、不倶戴天の父の仇だ。で五十人の部下を率い、東の門から乱入し、赤格子一人を目掛けるよう。さて次に郡上殿!」呼ばれて一つの人影は、立ったままで一礼した。「貴殿には尊いお方から、密書を預かっておられる由、十人の部下をお貸し致す。それに守られてご活動なされ。行動は一切ご自由でござる。次に小頭小町の金太!」「へい」というと一つの人影が、群を離れて進み出た。「お前は二十人の部下を連れて、西の門から乱入しろ。そうして出邸へ火を掛けろ。さて、最後にこの俺だが、残りの二十人を引率し、表門から向かうことにする。