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めいじんじごく
名人地獄
国枝 史郎
「サンデー毎日」1925(大正14)年7月5日~10月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,286 字 · 301 页
「空洞内の土牢だと※(感嘆符疑問符、1-8-78) これ、なんのためにそんな所へ、あの観世を入れたのだ! お前では解らぬ主人を出せ! なんとかいったな九郎右衛門か、その九郎右衛門をここへ出せ!」造酒は威猛高に怒号した。しかしお艶は恐れようともせず、水のように冷然と立っていた。
その後の観世銀之丞
「父はこの世にはおりません」やがてお艶が咽ぶようにいった。「父さえ活きておりましたら。……中風で斃れたのでございます。……つづいて母が死にました。そうしてそれ前に可愛い弟の六蔵が死んでしまいました。心臓で死んだのでございます。そうして母の死んだのは、悲しみ死になのでございます。……名に謳われた赤格子も、妾一人を後に残し、死に絶えてしまったのでございます。永い年月苦心に苦心し、ようやく出来あがった黒船へも、乗ることが出来ずに死にましたので。……それはそうとあなた様は、平手造酒さまでございましょうね?」
図星を指されて平手造酒は、思わず大きく眼を見開いた。
「お驚きになるには及びません」お艶は微笑を含んだが、「観世さまからこの日頃、お噂を承まわっておりました。