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ごせいげん
呉清源
「文学界 第二巻第一〇号」1948(昭和23)年10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,333 字 · 11 页
双葉山や呉清源の如き天才がジコーサマに入門するのも、彼らの魂が苦悶にみちた嵐自体であるからで、ジコーサマの滑稽な性格によって、二人の天才を笑うことは当らない。
別して、呉清源は、およそ人の思惑を気にするところがない人物で、わが道を行く、とことんまで、わが道であり、常に勝負は必死であり、一匹の虫を踏みつぶすにも必死であり、その激しさが、自己の限界というものと争う苦痛に直面した場合の厳しさは、言語を絶するものがある筈である。この男には、およそ、人間の甘さはない。芸道の激しさ、必死の一念のみが全部なのである。
対局、第一日目が終ったあとであった。本因坊が何を忘れてきたのだか知らないが、とにかく家に忘れ物をしてきたから、取ってきたいと言う。本因坊と呉清源とは一緒に風呂へはいったが、その風呂の中で、本因坊が呉氏にこのことをもらしたらしい。
風呂をでてくると、呉氏は読売の係りの者をよんで、争碁というものは打ちあげるまでカンヅメ生活をするのが昔からのシキタリであり、特に今回の手合は大切な手合なのだから、カンヅメの棋士がシキタリを破って外出するのは法に外れたことではありませんか、と、言葉は穏かだが、諄々と理詰めに説き迫ってくる気魄の激しさ、尋常なものではない。