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もふく
喪服
久生 十蘭
「文學界」1957(昭和32)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,793 字 · 24 页
静江 (八穂に)外資審議会、もうすんだのかしら。
八穂 (トースターにパンを入れながら)いままで起きてこないところを見ると、今日は休日よ……(かつに)美紗子さまは?
かつ お寝みになっていらっしゃいます。
八穂 まだ二日酔いのつづきか……ずいぶん飲んだからな。無理もないや。
静江 (たしなめるように)八穂さん。
八穂 (朗詠する)お姉えさま……いかなる恋に傷ついて……うち棄てられた岸のほとりで、あなたはお果てになりましたか……
(パンにバターをぬる)
静江 詩ですか。詩ならまたにしてちょうだい……まあ、そんなにバターを……
八穂 あたし肥りたいのよ、でくでくになるほど。
静江 それより肥ったら、ひとりで靴も穿けやしない。
八穂 どうせ、あたしはずんぐりむっくりよ。お姉さまのように、すらりしゃんとしちゃいませんから。バスト、九十五……いまさら減食をしたって、追いつくような体積ですか。
美紗、ピジャマにナイト・ガウンを羽織り、奥につづく扉口からブラリと食堂に入ってくる。
八穂 おめざめだ……(美紗に)ご気分はいかがですか。
美紗 (かつに)お水。(端のほうに掛けて食卓に頬杖をついている)