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しじゅうふわく
四十不惑
佐々木 邦
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1952(昭和27)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,633 字 · 26 页
と申入れた。
どうせそこまでは歩くのである。一緒のことも度々あった。妻の話がよく出るから、僕は途すがら妻のことから説き起した。妻は長年お茶をやっていて、表とか裏とかの免状を持っている。巷間に看板をかけている未亡人のお師匠さん達よりも一段上の免状だそうだが、商売的には教えない。極く懇意の人だけの面倒を見る。重役の娘さんが習いに来ていたこともあった。姪にも教えていた。
「僕にも習えと言うんです。しかし僕も女房の弟子になるほど耄碌しない積りです。ところで妻はこの頃あなたがすっかり気に入ってしまって、あなたを指導して上げたいと言い出したんです。小柴さん、どんなものでしょうか?」
「課長さん、願ったり叶ったりよ。私どこかへ習いに行きたいと思っていたところですから」
と小柴さんは渡りに舟だった。
「それは有難いです。師匠としては一人前ですから何分どうぞ」
「早速今度の日曜に伺わせて戴きます」
「これで僕も安心しました」
と言って僕は経緯を話した。妻を裏切るようだけれど、小柴さんも僕の裏表をよく知っている。
「課長さんはおやさしいのね」
「そうでもないんだけれど、恋愛で貰った家内ですから」