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しじゅうふわく

四十不惑

佐々木 邦

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1952(昭和27)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,633 字 · 26 页

青空文庫

一人々々への註文

「分りました。有難うございます。どうも飛んだ失礼を申上げました」

「まあ、いゝでしょう。そういうお話なら安心です。どうぞお上り下さい」

と僕が請じた。

青年画家は固辞したが、帯の効果を見たいから、一度令嬢にお目にかゝらせて戴きたいと申出た。お詫びもしたいというのだった。

「お安い御用ですわ。今度の日曜にお出下さい」

と妻が引き受けた。

一人々々への註文

それから一月ばかりたって、小柴さんの態度が一変した。妻が待っていても来ない日曜があった。風邪を引いたといって、二回続けて休んだ後、

「課長さん、私、勝手ですけれど、寒い間を休ませて戴きますから、奥さまにそう申上げて下さい」

と言い出した。

「それもいゝでしょう」

「お伺いして申上げなければならないんですけれど」

「構いませんよ。どこかお悪いんですか?」

「いゝえ。家の方が忙しいものですから」

僕の方は少しも変らない。家へ来なくても、会社で顔が見られる。

「どうだね? 銀ブラを附き合わないか?」

「駄目よ、私」

「何故?」

「今日は家へお客さまが見えますから」

と小柴さんは受けつけない。冗談を言っても真の一言二言答えるだけで立ってしまう。