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しじゅうふわく

四十不惑

佐々木 邦

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1952(昭和27)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,633 字 · 26 页

青空文庫

「まあ/\」

「昔を思うと、責任を感じるんです」

「課長さん、私、もう厭よ」

と小柴さんもナカ/\やる。不惑の課長はこういうことが嬉しいのである。

「ところで小柴さん」

「何でございますか?」

「今のお弟子入りの話はあなた一人ってことにして下さい」

「はあ」

「家内もあなただけの積りです。大勢になると厄介ですから」

「私も厄介じゃありません?」

「あなたは家内の気に入りですから、仕方ありません」

「仕方ないんですわね」

「そんな意地悪を仰有らないで」

「オホヽヽヽ。早速お弟子入りをさせて戴きますから、何分よろしく」

小柴さんは日曜毎に僕の家へ通うことになった。同僚のタイピスト達には内証だ。僕は課長として公明正大を欠くような心持がして、気が咎めたけれど、事情已むを得ない。小柴さんとしては、そんなことに頓着なく、優先待遇が嬉しいと見えて、土曜日の帰りがけに、

「又明日ね」

と囁く。

「お待ちしています。それとなく」

「それとなくなんて厭よ」

「駅までお迎えに出ましょうか?」

「大変よ。オホヽヽヽ」

弟子に飢えていた妻は熱心に指導した。小柴さんも感激があるから一生懸命だった。会得が早い。