轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

そうせきしとわたし

回想 子規・漱石

高浜 虚子

高浜虚子『回想 子規・漱石』。同一底本的分册已合并为一书。收入:漱石氏と私、子規居士と余。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 115,187 字 · 231 页

青空文庫

「さいなら。」と言った。漱石氏は優しく振り返りながら、

「さよなら。」と言った。私は今朝漱石氏がまだ何も知らずに眠りこけている玉喜久の濃い二つの眉を指先で撫でながら、

「もう四、五年立つと別嬪になるのだな。」と言っていた言葉を思い出した。私は京都に来て禅寺のような狩野氏の家に寝泊りしていて、見物するところも寺ばかりであった漱石氏を一夜こういう処に引っぱって来た事に満足を覚えた。昨日狩野氏の門前では何の色艶もないように思われた春雨が、今朝はまた漱石氏と私とを包んで細かく艶やかに降り注ぎつつあるように思われた。

その日私たちは万屋で袂を別って、漱石氏は下鴨の狩野氏の家に帰り、私は奈良の方に向った。

漱石氏の「虞美人草」の腹案はその後狩野氏の家でいよいよ結構が整えられたらしく、その月の上旬に帰京し、私は法隆寺の前の宿に泊って短い「斑鳩物語」の材料を得た。

京都に於ける漱石氏の記憶というのもこれだけに過ぎぬ。もう少し長くなる積りで書いて見たが、書いて見るとこんな短なものになってしまった。

その後漱石氏はまた一度京都に遊んで、祇園の大友という茶屋で発病してその家に十数日横臥し、介抱のために妻君が西下して来たような事もあったとの事である。