轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

そうせきしとわたし

回想 子規・漱石

高浜 虚子

高浜虚子『回想 子規・漱石』。同一底本的分册已合并为一书。收入:漱石氏と私、子規居士と余。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 115,187 字 · 231 页

青空文庫

余は進んでその傍に立って、もし眠っているのかも知れぬと思って、壁の方を向いている居士の顔を覗き込んだが、居士は眠っていたのではなかった。透明なように青白く、全く血の気がなくなってしまっているかと思われるような居士は死んだものの如く静かに横臥しているのであった。居士は眼を瞠いて余を見たがものを言わなかった。余も暫く黙っていたが、

「升さん、どうおした。」と聞いた。この時余の顔と居士の顔とは三尺位の距離ほかなかったのであるが、更に居士は余を手招きした。手招きと言ったところで、けだるそうに布団の上に投げかけている手を少し上げて僅に指を動かしたのであった。余はその意をさとって居士の口許に耳を遣ると、居士は聞き取れぬ位の声で囁くように言った。

「血を吐くから物を言ってはいかんのじゃ。動いてもいかんのじゃ。」

たちまち余の鼻を打ったのは血なま臭い匂いであった。居士の口中からともなく布団の中からともなく一種の臭気が人を襲うように広がった。余は憮然として立ちすくんだ。

その時余の後ろに立ったのは五十近い附添婦であった。余の室に這入った時たまたま外に在った附添婦は手に一つのコップを持って帰って来たのであった。