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とさのくにばしら
土佐の国柱
山本 周五郎
「読物文庫」1940(昭和15)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,375 字 · 35 页
「……呼びに行きましょうか」
いちばん年少の林久馬がそう云って立った。
「うん、そうして貰おう」
喜兵衛が頷いて云った。
久馬は直ぐに走って行った。……吸江の湾が殆ど眼の下に見える。三月はじめの空は浅緑に晴れあがって、高く高く鳶の鳴く声が、睡気を誘うように聞えていた。
間もなく久馬が、小弥太の腕を肩にかけて、担ぐようにしながら戻って来た。
「やあ、失礼、……まことに失礼」
小弥太はひどく酔っていた。
「すっかり酔ってしまって。……もう談合は済んでしまったのですか。いい気持に舞いはじめたものだから、つい」
「談合はこれからだ。まあ下にいないか」
喜兵衛が、ぶすっとした調子で云った。
小弥太が、萌えはじめた若草の上へ、崩れるように坐ると、みんな喜兵衛の周りへ座を進めた。……久馬だけは、少し離れて見張りのために立っていた。
「今日集って貰ったのは、高閑斧兵衛どのに就て、最後の意見を纒めるためだ」
喜兵衛が静かに口を切った。
「大通院さまが御他界あそばされて二年、この秋には御三年忌が行わせられる。各々も知っている通り大通院さまには、御生前なによりも、土佐の民たちがお家に帰服していないことを御無念に思召されていた。