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とさのくにばしら

土佐の国柱

山本 周五郎

「読物文庫」1940(昭和15)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,375 字 · 35 页

青空文庫

「ならぬ。貴公の出るところではない」

「仔細は存じません。無断で生垣を越えたお詫びも申上げます。しかし、このうえ小百合どの御折檻は、拙者が不承知です」

「なに、其方が不承知だと?」

皺をたたんだ斧兵衛の顔に、その双眼がきらりと鋭く光を放った。……小弥太はそ知らぬ顔で、有無をいわさず小百合を援け起すと、

「御老職も噂くらいはお聴きでしょう」

「…………」

「拙者は予てから御息女を家の妻に申受けたいと存じていたのです。いや! 場所柄作法の論は無用です。妻に申受けたいという考えをお含み置き下さればそれで宜しい。……小百合どの、さあ参りましょう」

「待て池藤、待て!」

斧兵衛は、怒声をあげた。

「それは斧兵衛の娘だぞ」

「年頃になれば嫁して良人に従うのが女子の道です。兎に角お怒りの鎮まるまで、お預り致します。……小百合どの、さあ……」

「いいえ、お放し下さいまし」

小百合は、執られた手を放そうとしながら、

「わたくし、父の成敗を受けなければなりませぬ。どうぞこのままお捨て置き下さいまし」

「話はあと、話はあとです」

小弥太はびくともせず、

「茂右衛門どの、後は頼むぞ」

と云い捨てると、厭がる娘を強引に、まるで抱えるようにして伴れ去った。